先日、気象庁では防災気象情報の再構築に向けた議論を行うため、「防災気象情報に関する検討会」を立ち上げました。
検討会の開催趣旨を見ると、
しかし、防災気象情報について、「情報の数が多すぎる」、「名称がわかりにくい」などの指摘がなされており、情報体系について、内容の過不足なくシンプルかつ適切なタイミングで受け手に「伝わる」よう整理することが求められている。
防災気象情報に関する検討会 開催趣旨 より一部抜粋
このような問題提起がなされており、複雑化・肥大化した防災気象情報を整理する必要性あることを示唆しています。
昨年から運用が開始された、線状降水帯による大雨への警戒を呼び掛ける「顕著な大雨に関する気象情報」や、数年に一度しか起こらないような短時間の大雨の発生を示す「記録的短時間大雨情報」など、防災気象情報の種類が増えすぎて、耳で聞いただけでは違いが分からなくなっているのが現状ではないでしょうか。
昨年、気象台で講演を行った際にも話題になったのですが、気象庁内でも見直しの機運が高まっているのではないかと思います。
増えすぎた防災気象情報を整理するうえで、アメリカ国立気象局(NWS:National Weather Service)の防災気象情報を探ってみたいと思います。
防災気象情報を体系的にまとめたページは見つけられなかったものの、「Glossary(用語集)」から検索するとよさそうですね。
大きく分けると、「Statement」「Advisory」「Watch」「Warning」「Emergency」となっているので、種類ごとに見ていきましょう。
「Statement」
直訳すると「声明」ですが、気象に関する公的なアナウンスなので、「全般気象情報」や「府県気象情報」に相当するものといえそうです。
「Hurricane Statement」や「Severe Weather Statement」でハリケーンや発達する低気圧などによる風水害に関して発表されるほか、「Flash Flood Statement(鉄砲水・土石流)」や「Flood Statement(洪水)」などのように個別の事象に関する発表もあります。
「Advisory」
用語説明によると、「警報級にはいたらない気象状況への注意喚起」のようなので、注意報の一歩手前くらいの情報になるでしょうか。
「念のために注意しとけよ!」と言っているような気がします。
「Watch」
「Advisory」より「Watch」の方が気象庁の「注意報」に近いのではないでしょうか。
気象災害や水害が発生する危険性が高くなっているものの、発生場所や時間帯はまだ特定できないときに発表されます。
「Flood Watch(洪水)」「Gale Watch(強風)」などの気象現象について発表されるほか、「Excessive Heat Watch(高温)」などの発表もあります。
「Warning」
気象庁の「警報」に当たる情報です。
気象災害や水害の発生が切迫している状態のときに発表されます。
「Emergency」
「Emergency」が発表される気象現象は、「Tornado(竜巻)」のみです。
発生中の竜巻によって壊滅的な被害が発生するおそれのある時に発表される、竜巻に関する極めてまれな警報のようです。
気象庁の「特別警報」のようなもの、というより竜巻災害に特化した防災気象情報と考えるといいかもしれません。
また、アメリカの防災気象情報を見ていると、極端な気象現象に関しては「Warning」や「Statement」などの文中で警戒呼びかけ・解説をしています。
これに対して日本の場合は、「顕著な大雨に関する気象情報」や「記録的短時間大雨情報」などのように、極端な気象現象を警報・注意報から独立させて発表しています。
個別の現象に対して注目させることはできると思いますが、情報が増えすぎると何に注意すればいいのか、他の情報との違いは何なのか、分かりにくくなってしまうように思います。
今回の検討会で複雑化した情報が整理されることを望むのはもちろんですが、整理された情報の中から大事な情報に気づけるよう、私も気象キャスターとして努力していかなければなりませんね。
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