週末に雨が降るのはなぜ?

以前視聴者からの疑問で、

「週末は天気が悪いように感じますが、因果関係はあるのでしょうか?」

という内容を紹介しました。

「週末は外出する機会が多く、悪天候は印象に残りやすいからでは?」

とか、

「雨が多い気もするけど、さすがに因果関係までは…」

という結論に落ち着きそうですが、とりあえず観測データを調査することにしました。

調査内容はこちら

○対象地点:九州7県の気象台(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島)

○対象期間:1991年~2020年(2021年以降の平年値に対応)

○調査項目:日降水量・降水量5ミリ以上の日数・降水量0.5ミリ以上の日数(それぞれ曜日ごと)

調査項目を3つに分けたのは、雨の降り方を踏まえた分類をしたかったためです。

では、項目ごとに検証していきましょう。

曜日ごとの「日降水量」

「日降水量」はその日の総降水量なので、日降水量が多い時は、台風や発達した低気圧、梅雨前線による影響を強く受けていたといえます

曜日ごとの検証結果を順位ごとに色付けしたものがこちら。

曜日ごとの日降水量(1991-2020) ※単位はミリ

長崎から鹿児島にかけて、土・日と水曜日にはっきりピークが現れています。

宮崎では、最も多い曜日(日曜日・12035.0ミリ)最も少ない曜日(金曜日・10097.0ミリ)と比べ、降水量が約20%も多くなっています。

九州(特に南部)に住んでいる人にとって、「少なくとも直近30年間の週末は雨が多かった」ということがデータ上からも言えますね。

福岡と佐賀は月・金にもピークが現れていますが、台風が九州付近を北上するケースを考えると、

・台風の外側の雨雲が先行してかかること

・九州内では遅れて台風の影響を受けること

によって、タイミングのずれが生じたのかもしれません。

若干のこじつけ感がありますが(笑)、いずれにしても特定の曜日に降水量が集中していることは間違いありません。

曜日ごとの「降水量5ミリ以上の日数」

1日の降水量だけに着目するだけでは、大雨やまとまった雨が目立ってしまい、「普通の雨」の影が薄くなってしまうので、大雨ではないものの一定量の雨が降った日にも注目してみます。

ここで、「降水量5ミリ以上」の雨はどんな降り方かというと、

1時間で5ミリの雨が降る場合

本降りの雨と感じるような雨の降り方

1日で5ミリの雨が降る場合

「雨の一日だった」と感じる雨の降り方

というような雨のイメージになるので、多くの人が「この日の天気は雨だった」と感じる日、として「降水量5ミリ以上の日数」を位置付けたいと思います。

こちらも同じように曜日ごとに「降水量5ミリ以上の日数」を調べていきます。

曜日ごとの5ミリ以上の降水量を観測した日数(1991-2020)

日降水量と同様に、水曜日と日曜日前後に集中していることが分かります。

曜日ごとの「降水量0.5ミリ以上の日数」

もう少し、雨の強さのレベルを下げてみましょう。

0.5ミリの雨は、アメダスの雨量計で観測できる最も少ない降水量です。

※0.5ミリ未満の雨は感雨器で把捉。

この場合の雨の降り方ですが、

1時間で0.5ミリの雨が降る場合

水たまりはできないものの、地面を湿らせる程度の雨の降り方

傘を差さずに外にいるとまあまあ濡れる

1日で0.5ミリの雨が降る場合

路面の様子などから雨が降ったことは分かるが、くもりの印象が強い

いずれも私の感覚によるものですが、多くの人が「この日の天気はくもり時々雨かくもり一時雨」と感じる日、として「降水量0.5ミリ以上の日数」を位置づけたいと思います。

曜日ごとの「降水量0.5ミリ以上の日数」を調べたものがこちら。

曜日ごとの0.5ミリ以上の降水量を観測した日数(1991-2020)

ばらつきが減って、きれいに月・水・日曜日に分かれました。

ここまで特定の曜日に偏るとは思いませんでしたね。

雨の降り方ごとに曜日のばらつきを見てきましたが、全体をまとめると、

直近30年間の九州では、「日・月曜日付近に大きな1つのピーク、水曜日付近に2つ目ののピークがあった」

ということになります。

雨の周期性に注目

雨の降る日が特定の曜日に集中しているということは、

周期的に雨が降っている

と考えることができます。

雨を降らせる現象として、主なものは、

「台風(熱帯低気圧)」

「温帯低気圧(温暖・寒冷前線を伴うものも)」

「停滞前線(梅雨前線・秋雨前線)」

が挙げられるので、それぞれの周期性に注目してみます。

まずは「台風(熱帯低気圧)」についてですが、接近・上陸の際に断続的に雨を降らせます。

ただ、1つの台風が過ぎてから、次に台風が来るまでの日数はまちまちなので、台風による雨は周期的なものではなく、曜日に対してランダムなものといえそうです。

次に「温帯低気圧(温暖・寒冷前線を伴うものも)」ですが、春や秋の天気は高気圧と温帯低気圧が交互に訪れるため、数日の周期で天気が変わります。

「春に3日の晴れなし」という言葉は、春の晴天は3日も続かず、天気の変化が早いことを表しているので、「温帯低気圧」は3日に1回程度の周期的な雨をもたらすものといえるでしょう。

さらに、3日に1回程度の周期で雨が降るのであれば、1週間でおよそ2回の雨のピークが現れることも説明できます。

最後に「停滞前線(梅雨前線・秋雨前線)」については、梅雨時季や秋季に現れ、長期間にわたって雨を降らせるものなので、周期的とはいえませんね。

ということで、周期性を持つ現象は温帯低気圧だけです。

「週末に雨が降ることに因果関係はあるのか?」という疑問に対する答えを整理すると、

温帯低気圧が周期的に雨を降らせるために、特定の曜日に雨が集中しやすくなる。

特に九州の直近30年間では、週末に雨の周期がかかっていたことで、週末によく雨が降ると感じるようになった。

ということになるのではないでしょうか。

もちろん、週末は予定が入りやすいために当日の記憶が残りやすかった、という心理的な要素もあると思いますが、降水量の観測データからも裏付けられるとは意外な結果となりましたね。

関東のデータも調査

せっかくなので、関東地方の1都6県のデータも調べてみました。

調査内容は九州地方で行ったものと一緒ですが、改めて掲載。

○対象地点:関東1都6県の気象台(水戸・宇都宮・前橋・熊谷・東京・千葉・横浜)

○対象期間:1991年~2020年(2021年以降の平年値に対応)

○調査項目:日降水量・降水量5ミリ以上の日数・降水量0.5ミリ以上の日数(それぞれ曜日ごと)

「日降水量」

月~水曜日と土曜日にピークが現れています。

「降水量5ミリ以上の日数」

月・水・土曜日にピークが現れています。

「降水量0.5ミリ以上の日数」

月~水曜日にかけての1つのピークです。

全体をまとめると、

直近30年間の関東では、「月~水曜日付近に大きな1つのピーク、土曜日付近に2つ目ののピークがあった」

ということになります。

九州と比較すると、雨のピーク曜日がずれていますが、これは温帯低気圧が西から東へと移動していることに影響を受けたことが考えられます。

ただ、九州と同様に「2つの雨のピークが現れる」構造は同じです。

土曜日にも雨のピークが現れているので、関東在住の方も「週末は雨が多い」ことに共感するかもしれませんね。

全国的に調査してみたいところですが、集計が大変なのでいずれの機会に譲りたいと思います。

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