絵暦を読もう

尾嶋氏旧蔵古暦集

今年の節分は「2月3日」ではなく、「2月2日」なんですね。

年明けにこの事実を知り、驚きました。

1年は「365日ちょうど」ではなく、「365日と6時間弱」なので、ずれが積み重なって日にちも変動することが原因です。

テレビやインターネットでもいろいろと紹介されていますが、国立天文台がまとめているものが詳しいと思います。

節分の日が動き出す - 国立天文台暦計算室
トピックスではこよみに関する基礎知識やその年の話題になる現象等をとりあげています。:節分の日が動き出す
秋分の日が動き出す - 国立天文台暦計算室
トピックスはこよみに関する基礎知識やその年の話題になる現象等をとりあげています。:秋分の日が動き出す

よくよく考えてみれば、春分の日や秋分の日も変動しているので、立春の前日である節分の日が変動するのは当然なんですよね。

気づかなかったことを反省しつつ、「もっと掘り下げたネタを!」と意気込んでいたところ、ふと気づきました。

「暦の情報は今でこそテレビやネットで手軽に手に入るけど、情報がない時代はどうだったのか?」

ここで注目したのが、旧暦の江戸時代に使われていた絵暦です。

国立国会図書館のアーカイブにあった、安永四年(1775年)の『盲暦張交帖(田山暦)』をつないで並べました。

『盲歴張交帖(田山暦)』 国立国会図書館アーカイブより

現在の岩手県で作られた暦で、右端の1月から左端の12月にかけて様々な判じ絵が描かれています。

当時は文字が読めない人も多かったため、このように絵だけの暦も利用されてきました。

私の分かる範囲ですが、読み解いてみましょう。

縦棒1本が「1」、○が「5」を意味しており、月数を表しています。

よく見ると上下にずれていますが、上側が1か月が30日間の「大の月」、下側が1か月が29日間の「小の月」となっていて、日数の違いを位置で表しています。

旧暦は月の満ち欠け(約29.5日周期)をベースにしているため、1か月が29日だったり、30日だったりします。

また、丸で囲んだ判じ絵には重箱と矢が描かれているので、4月4日は八十八夜だったようですね。

8月から10月にかけては、収穫の秋の時季に当たるため、鎌の絵で田の刈り取りを教えてくれています。

ところで、各月の上に動物が描かれていますが、いずれも十二支の動物です。

六十干支(ひのえうま等)が日付に割り振られており、それぞれの動物は各月の初日(朔日)の干支に当たる動物となっています。

最後の月には鬼が描かれていますが、間違いなく節分ですね(笑)

なお、この月は12月ですが、前の月も12月です。

2回目の12月は白抜きで描かれていて、閏月の12月となっています。

旧暦の1か月の日数は「29日」か「30日」と説明したところですが、この場合は1年間が約354日となってしまい、11日ほどずれが生じてしまいます。

3年に1度程度「閏月」を入れて1年を13か月に延ばすことで、このずれを修正して太陽暦に近づけています。

初めて絵暦を見たときはほとんど理解できなかったのですが、見慣れるとだんだん意味が分かって面白くなってきます。

現代と比べて情報がない時代は、太陽が真東から上って真西に沈む時季に春分・秋分を知り、除夜の鐘の音で大みそか・正月を迎え、さらに月の満ち欠けで細かい日付を把握していたのでしょうね。

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