気象庁ウェブ広告に必要なこと @宮崎地台・職員向け研修講演

今年は講演や講座の講師をいくつも引き受けてきましたが、12月21日(火)は宮崎地方気象台での職員向け研修として講演させていただきました。

どちらかというと、こちらから気象台に対してお話を伺うことが多いので、講師として招いていただけるとは大変光栄なことです。

お話をする相手が気象台の方たちなので天気の話はあまり深堀りせず、総務省で経験した業務の中で気象庁とも関係がありそうな仕事や、民間の放送局に転身した立場で感じてきたことなどを中心に伝えてきました。

気象台の方たちとも実のある話ができ、私としても資料作りを通じて自身の考えをまとめることができたので、大変有意義な講演となりました。

講演内容については、記事として小出しに投稿していければと思っていますが、昨年から話題になっている気象庁ウェブサイトの広告掲載の是非についても話をしたので、簡単に触れておこうと思います。

気象庁ウェブサイトでの広告の掲載は2020年9月から始まったものの、閲覧者の検索履歴などによって掲載内容が変動する「運用型広告」では広告掲載基準に合わないものが続出してしまい、運用開始から1日で停止を余儀なくされた経緯があります。

その後、広告内容が固定されている「純広告」に限定し、2021年7月から運用が再開されましたが、広告スペースの大きさによる見にくさや防災情報のページに広告が表れる不自然さなどが指摘されており、あまり歓迎されていないように感じます。

広告掲載がどのようにして導入されたのか調べてみたところ、2020年になって降ってわいたような話ではなく、政府与党の令和2年度予算編成大綱でこのように記されていました。

2.しなやかで強い令和新時代の経済

<新たな時代を切り拓く社会資本主義の戦略的な推進> 3段落目

また、(略)、気象データ提供に係る民間からの収入等の確保、(略)に取り組む

令和2年度予算編成大綱(令和元年12月12日 自由民主党 公明党)より抜粋

令和元年(2019年)の末に発表されているので、検討自体は平成のうちから行われていたものと思われます。

気象庁のウェブサイトも国有財産と捉え、有効活用していく方針は変わらないのではないでしょうか。

ただ、広告掲載による見にくさ、コストパフォーマンスの悪さなども指摘されており、気象庁長官の定例会見の場でもたびたび話題に上がっています。

(ウェブ広告掲載に関して)

Q : きっちり議論してからやった方がいいと思います。財務省のプレッシャーという話も出ていますが、国の財政をなぜ防災の主幹である気象庁が補うようなことをしなくてはならないのでしょうか。もしも、気象庁の技術開発や衛星やスパコンの維持費が現状の予算でどんどん削られている中で逼迫しているのであっても、国民の命を守る国の主幹の機関として、国と闘うべきではないかなと思います。そこを曲げたら、この省庁の存在意義に関わるということを認識して、広告を入れてお金を稼いでもそれほどの額ではないですよ、と言うのであれば、よっぽどやめた方がいいと思います。

A : おっしゃられたように、そんな額ではないです。これがあるから気象衛星ひまわりが打ち上がるとかそういったものでは全くありません。私としては、一定の収入が得られるものがあれば、それは有効活用することが我々の責務だと私は思っています。

令和2年(2020年)7月15日 長官会見要旨

双方の言い分に理はありますが、気象庁ウェブサイトは多くの国民が閲覧し、国民の財産とも言えるものなので、議論が尽くされていないように感じます。

ただ、議論を行ううえで前提となる情報が乏しいのが残念です。

今回の講演での資料作成に当たり、ウェブ広告掲載に関する収支状況が分かるものを探していたのですが、”2021年度の収入は当初想定より激減して800万円程度に”といった新聞記事は見つかるものの、気象庁自身が収支を公開したものは見当たりませんでした。

来年度予算の概算要求書を確認しても、「雑入」‐「雑収」の項目はあっても細かい内訳がないので、広告収入がどのくらいだったのか把握することができません。

気象庁ウェブサイトは多くの人が利用する共有財産でもあるので、どの程度のコストパフォーマンスを許容するのかを議論できるよう、ウェブ広告に関する収支状況を積極的に情報公開してもらいたいところです。

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