災害対策基本法の一部改正に関して、別の投稿で「避難情報の見直し」をまとめたところですが、もう1つの重要な改正部分を紹介します。
避難情報と異なり、直接感じにくいものですが、災害対策本部の設置に関する規定が改正されました。
主な改正内容を見ていきましょう。
○ 災害対策本部設置のタイミング
これまでは、
「災害が発生した場合」
に災害対策本部が設置されていました。
今回の改正により、
「災害が発生し、又は発生するおそれがある場合」
に災害対策本部が設置できるようになりました。
もちろん、これまでも災害発生前の時点で、関係閣僚会議や災害対策会議などを開催して情報収集などを行っていましたが、より早い段階から災害応急対策ができるようになったといえるでしょう。
○ 特定災害対策本部の新設
今回の改正によって、特定災害対策本部が新しく設置されるようになりました。
これまでの災害対策本部は、
・緊急災害対策本部(本部長:内閣総理大臣)
・非常災害対策本部(本部長:内閣総理大臣 ※今回改正より)
の2種類となっていたため、3種類に増えたことになります。
緊急災害対策本部は著しく異常かつ激甚な非常災害の際に設置されることから、過去に設置されたのは平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の発生時のみです。
近い将来に発生が予想されている南海トラフ地震についても、想定被害規模を考慮すると緊急災害対策本部が設置されることになるでしょう。
また、非常災害対策本部は非常災害の際に設置されます。
過去に設置されたのは、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)や平成28年熊本地震、令和元年東日本台風(台風19号)、令和2年7月豪雨(球磨川豪雨)など、死者・行方不明者が100人規模に上るような災害です。
緊急災害対策本部・非常災害対策本部のこれまでの設置状況はこちら
令和2年度防災白書より(令和2年3月31日現在)
そして新たに加わった特定災害対策本部は、防災担当大臣を本部長とし、災害(その規模が非常災害に該当するに至らないと認められるものに限る。)の際に設置されます。
死者・行方不明者が数十人規模の災害が想定されており、直近では平成29年7月九州北部豪雨などが該当すると思われます。
命名されるような災害には、政府のいずれかの災害対策本部が設置されるものと考えていいでしょう。
今回の災害対策基本法の一連の改正により、早期段階からの災害対策本部の設置や、災害対策本部の設置対象の拡大が図られたことで、災害対策・応急対策がより充実することを期待したいと思います。
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