もう1つの宮崎?!

世界の気象

飲みの場で雑談していたネタを2019年の年末特番で扱ったのですが、それは、

「宮崎と似た気候の場所を世界中から探す」

というもの。

居酒屋で生まれたテーマにしては、あまりに壮大です(笑)

まずは聞き取り調査

さて、具体的な地域を絞る前に、まずは宮崎市内で街頭インタビューをしてみたところ、、、

オーストラリアが多くなりました。

ヨーロッパや東南アジアにシールを貼ってくれた人も多かったので、割と回答が分かれた印象です。

実は私もオーストラリアをイメージしていて、シドニーやパースではないか、となんとなく当たりをつけていました。

ここから地域を絞っていくわけですが、回答された国や地域を一つ一つ調べても時間がかかるので、スクリーニングをかけてみます。

気候を形作る3つの条件

宮崎の気候を踏まえ、私が想定した条件は3つ。

緯度

台風(ハリケーン・サイクロン・熱帯低気圧)

暖流

です。

①緯度

北緯・南緯ともに同程度の緯度であれば、季節変化はだいたい似ています。

宮崎市は北緯32度に位置するので、中緯度帯である北緯・南緯ともに25度~40度をターゲットとしましょう。

②台風

宮崎はもちろんのことですが、日本自体台風が到達しやすく、降水量も多い国です。

NASAが過去に発生した台風・ハリケーン・サイクロン(熱帯低気圧も含む)の進路図を公表しているので、台風などがよく襲来する地域が候補地です。

なお、色の違いは勢力の強さを意味していて、水色の軌跡が弱く、赤い軌跡ほど強いことを示しています。

③海流

気候を形作る要因として、海流も挙げられます。

日向灘には暖流の黒潮が流れているように、暖流は温暖な気候をもたらします。

沿岸で暖流が流れている地域にも注目です。

以上の3つの要素をすべて重ねた図がこちら。

私も想定していたオーストラリアですが、中緯度帯にはあるものの、到達するサイクロンは少なく、降水量は少なめです。

本命視していたパースは、思っていた以上にカラカラの気候でした。

残念ながら最多得票だったオーストラリアは脱落です。

ここで北半球の大西洋に注目すると、メキシコ湾流(暖流)が流れ、ハリケーンも頻繁に襲来するアメリカ合衆国の東海岸が有力な候補地域となります。

まずは宮崎市の気候を振り返る

東海岸のデータを調査する前に、宮崎市の平年(1981年~2010年の30年平均)の気温・降水量のデータはこちら

 1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年間
平均気温
(℃)
7.58.611.916.119.923.127.327.224.419.414.39.617.4
降水量
(ミリ)
63.890.8182.1212.5239.3429.2309.4290.2354.6181.895.060.02508.5

真夏の平均気温は27℃を超えていますが、冬季は1桁の気温まで冷え込んでいます。

また、年間降水量は2500ミリを超えて、相当多い水準となっていますね。

アメリカ合衆国の東海岸を調査

アメリカ国内のデータは、アメリカ海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration)のサイト内(https://www.ncdc.noaa.gov/ghcn/comparative-climatic-data)に各観測地点の30年平均データ(1981年~2010年)が掲載されているので、ひたすらデータを眺めていきます。

アメリカ東海岸に絞ったとはいえ相当広く、南北に広がっているので気候の変化も大きくなっています。

ワシントンD.C.は寒すぎ、フロリダだと暖かすぎだったので、その中間あたりを調べてみると

・サウスカロライナ州チャールストン

・ノースカロライナ州ウィルミントン

・バージニア州ノーフォーク

の3地点の気象データが近いことが分かりました。

1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年間
平均気温
(℃)
9.110.914.518.222.526.127.827.224.419.414.810.418.8
降水量
(ミリ)
94.275.294.273.976.7143.5165.9181.6154.995.361.779.01296.2
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年間
平均気温
(℃)
7.89.412.817.221.325.427.326.523.718.413.79.217.7
降水量
(ミリ)
95.591.9106.971.6114.0131.6190.0188.2199.198.883.691.91463.3
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年間
平均気温
(℃)
4.75.99.714.619.224.126.425.522.416.711.66.715.6
降水量
(ミリ)
86.479.293.586.686.6108.2130.6140.2120.986.980.082.81181.9

なお、北西太平洋の台風発生数に比べて北大西洋のハリケーン発生数が少なく、アメリカでは梅雨もないことから、年間降水量はいずれも宮崎の半分程度となっています。

宮崎に匹敵する降水量を誇る場所は、熱帯のグアムなどの限られた場所ですが、調べた3地点は全米の中でも比較的降水量が多い印象です。

3地点を比較してみると、宮崎と近似しているのはウィルミントンのデータですかね。

宮崎市との意外な関わり

データも得られたので、最終的にどのようにまとめるかデスクと相談していたところ、

「バージニア州に宮崎市と姉妹都市を結んでいる都市があった気が…」

とのこと。

確かに姉妹都市を締結しているところがありました。

バージニア州バージニアビーチ市です。

宮崎市ホームページ(https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/city/international_exchange/2066.html

しかも、よく見たら3つ目の候補地・バージニア州ノーフォークから目と鼻の先に位置しています!

宮崎市役所に取材したところ、元々あった民間レベルでの交流から発展し、姉妹都市締結を行うことになったようなのですが、気候が似ていることもきっかけの1つだったのでは、とのこと。

気候の類似性を調べることから始まりましたが、最終的に姉妹都市交流という人間同士のつながりに辿り着くとは面白いものですね。

宮崎にバージニア?

ところで、宮崎市内にはバージニアビーチ市との姉妹都市交流を記念した場所があります。

上野町でこんな建物を見た覚えはありませんか?

周辺にはいくつも居酒屋などがあるので、付近に立ち寄ったことがある方も多いと思うのですが、これが何のモニュメントなのか知っている人は少数なのではないでしょうか(私もそうでした…)。

この塔は、バージニアビーチ市との姉妹都市締結10周年を記念して建てられたもので、バージニアビーチ市内にあるヘンリー岬灯台なんだそうです(実物の約4分の1)。

なお、灯台の反対側に回ると、ちゃんと「バージニアビーチ広場」とありますね。

何気なく通り過ぎてしまいそうな場所ですが、これからはバージニアビーチ市との交流や気候の共通点に思いを馳せながら、バージニアの風を感じてみてくださいね。

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